一部の音波放射は、産業オートメーションやコンピュータ･アプリケーションにおけるスイッチやディスプレイなどの高速データ･リンクによって発生します。産業用アプリケーションが正常に動作するには、電磁干渉（EMI）を制限する必要があり、多くの場合、シールドの強化が必要となります。
高度な信号完全性を保証するため、STのECMF™テクノロジーでは、高速データリンクにより生成されるコモン･モード･ノイズに由来する干渉をフィルタ処理します。EMCの国際規格への準拠に加え、ESDプロテクションを内蔵するコモン･モード･フィルタ（ECMF）のポートフォリオを利用することで、広範囲のインターフェース速度におけるESDの問題を回避することができます。
近くのノイズの周波数がRF信号の伝送に干渉する現象を、アンテナ感度劣化または感度劣化と呼びます。レシーバの感度が低下するため、送信されたデータの一部またはすべてが伝送中に失われます。USB4、USB 3.2、HDMI 2.1や、ディスプレイ用のDisplayPort 2.1などの高速データリンクからのノイズは、Wi-Fi 6、Wi-Fi 6E、Bluetoothモジュールなどの性能を低下させる可能性があります。
アンテナの感度劣化およびRFの干渉は、産業用およびコンスーマ用のアプリケーションの幅広い製品に影響を与え、システム性能を大幅に低下させ、製品のブランドの評判を傷つける可能性もあります。エンジニアはこの問題を認識していますが、その解決は困難な場合もあります。
ECMF™テクノロジーは、コモン･モード･フィルタと、低クランプ電圧で最適化されたESDプロテクションとを組み合わせた統合型ソリューションです。このシリコン･ベースのテクノロジーにより、STは、受動素子よりも同相信号除去比（CMRR）を向上させるために、非常に高い誘導性インピーダンスを持たせたきわめて小型のデバイスを提案します。
さらに、10.7GHzの差動帯域幅を持つSTの最新のECMFフィルタは、産業用アプリケーションのPCBレイアウトの制約に対応するため、4ラインのECMF4-40A100N10をQFN-10Lパッケージ、2ラインのECMF2-40A100N6をQFN-6Lパッケージで提供しています。
高速データリンクは、差動信号を使用してデータを送信しています。差動ペア（D+とD–）の2つの信号は、その振幅は同じですが位相が逆です。このタイプの信号には、差動モードとコモン･モードの2つのモードが考えられます。
ソースと負荷の間を流れる信号は、差動モードでは逆位相、コモン･モードでは同位相になります。理想的には、送信データは差動モードで送信される一方、コモン･モード信号はゼロになります。
残念ながら、差動ペアの信号が正確に逆位相でない場合、または、差動ペアの各ラインに結合ノイズが乗っている場合には、不要なノイズが発生する可能性があります。このノイズにより、ケーブルやフレックス･アセンブリを通して放射が発生します。
特に産業用アプリケーションにおいて、RF通信の堅牢性を向上させ、アンテナの問題を解決するには、コモン･モード･フィルタとESDプロテクションが必要です。これは、システムがESDおよびEMCの準拠試験に合格するためにも役立ちます。
適切なECMFデバイスを選択する際の課題は、放射ノイズを除去するための効果的なコモン･モード･フィルタと、有用なデータリンク信号をフィルタで除去しないようにするための広帯域差動フィルタとの間で、最適なバランスを見つけることです。
産業機器市場では、昨今、ディスプレイのサイズや解像度が大きくなるとともに、システム間でより大量のデータが送信されるケースが増えています。このため、USB4に対応するUSB-Cコネクタや、HDMI 2.1に対応するHDMIコネクタに関連し、より高いデータ伝送速度に対応可能な規格が開発されています。さらに、Industry 4.0の最新のトレンドとして、システムのサイズと消費電力の削減が求められています。産業用システムでは、サイズが小さくなると、内部でのノイズ放射のリスクが高まります。
EMIおよびアンテナの感度劣化の問題を軽減するため、STのシリコン･ベースのECMF™テクノロジーは、ESD IEC 61000-4-2およびEMC IEC 61000-4-3規格に完全に準拠して、産業用アプリケーションの課題に対応できるように最適化されています。
10.7GHzの差動帯域幅を持つ弊社の最新のECMFフィルタには、4ラインのECMF4-40A100N10（QFN-10Lパッケージ）と2ラインのECMF2-40A100N6（QFN-6Lパッケージ）があります。
