人工知能(AI)とは、あたかも人間の認識能力を備えているかのような処理を実現する、ハードウェアとソフトウェアで構成された一連のシステムです。
数学的モデルやルール・ベースの従来型モデルでは効果を得られないか正確でないことが判明している、複雑な実世界の課題を近似するために、自然界からヒントを得た計算手法を組み合わせて使用します。人工知能は、人間の脳で進行する推論方法を近似します。厳密でも完全でもない知識に基づき、長期間にわたって蓄積された経験から、状況に適応した判断を下します。
STは長年にわたり積極的にAI研究を続け、その知識を開発ツールに応用してきました。こうしたツールを活用することで、組込みシステムの開発者はSTのマイクロコントローラやセンサに、AIの手法を導入できます。
エッジAI
人工ニューラル・ネットワーク(ANN)は、日常生活で遭遇する、さまざまな課題に対処します。自然環境、家庭、職場、自動車、工場、身の回りの品々などに設置されたセンサからのデータを活用できます。現在多くに用いられているモデルでは、センサからの生データを集中化された強力なリモート知能(クラウド)に送信することが前提となるため、きわめて大きなバンド幅と計算能力が必要になります。数億台もの端末装置から送られてくる音、動画、画像のファイルを処理することにより、そのようなモデルでは応答性が低下する可能性があります。
知能システムの集中型から分散型への転換
クラウドで実行されていた解析を、検出点や作用点のより近くで実行すれば、はるかに効率的なエンドツーエンド・ソリューションを、AIによって実現できます。このような分散型の手法は、エッジが備える最先端の計算能力を生かすことで、データ転送のバンド幅やクラウド・サーバの処理能力に求められる要件を、いずれも大幅に緩和します。さらにユーザ・データ主権の側面でもメリットがあります。個人のソース・データが事前解析された後に、より高度なに解釈された符号化済みデータとしてサービス・プロバイダに送られるからです。