アプリケーション・ドメイン:
- スマート家電(冷蔵庫)
- スマート・リテール(自動販売機)
- 倉庫管理
アプローチ
従来、冷蔵庫や小売店の商品棚の在庫監視は作業者による目視確認、重量センサ・システム、クラウドベースの画像認識に頼っていました。これらの手法は、いずれも大きな制約を抱えています。目視確認は人件費がかさむだけでなく商品の補充が遅れがちです。重量センサの導入には多額の費用を要するハードウェアの改造が必要となり、検出性能は製品の配置に敏感に影響されます。クラウドベースのソリューションは広帯域通信を必要とし、レイテンシの問題やプライバシーに関する懸念をもたらします。従来のマイコンも、ローカルで正確な検出モデルを動作させるには処理能力が不十分であり、誤検出の頻度が高まります。
CamThinkは、STM32N6に基づいて構築されたNE301を導入することで、これらの課題を解決しました。このカメラ・チップはAIベースの製品認識処理のすべてをデバイス上で完結させます。在庫が変化すると、画像データではなく必要最小限の構造化データ(例:"コーラ:3缶")だけが送信されます。これは、スマート在庫管理システムを、コストおよびプライバシーの側面で根本的に変革します。
この組み込みAIの手法がもたらす主なメリット:
- 通信トラフィック量の大幅削減:画像をアップロードするソリューションに比べて送信データが99%以上少なくなり、クラウド・コストを最大90%削減
- 柔軟な電源の選択肢:バッテリ、PoE、Type-Cなどの電源に対応可能であり、多様な環境への導入が可能
- プライバシー・バイ・デザイン:画像データがデバイスから漏れることは一切なく、構造化された検出結果だけが共有される
- 運用コストの削減:目視確認作業が廃止され補充の遅延を低減
- リアルタイムの在庫認識:クラウドとの往復通信を必要とせず、50ms以下の推論により在庫を瞬時に可視化
このCamThinkのソリューションは、現代の小売および家電の分野にSTM32N6の組み込みAIを導入すれば、インテリジェントかつ拡張性に富み、コスト効果に優れた在庫監視を実現できることを証明しました。
アプリケーションの概要
NE301は、画像取得から構造化された結果の出力まで、検出パイプラインのすべてをローカルで実行し、クラウド上の処理を一切必要としません。
1.画像取得
NE301は設定されたスケジュールに基づいて定期的にウェイクアップし、搭載された広角CMOSイメージ・センサによって冷蔵庫内部の画像を取得します。内蔵ISPがノイズを除去し露出を自動調整するため、反射や低照明などの複雑な照明条件下でも鮮明な入力を確保できます。
2.エッジ推論
内蔵のNeural-ART NPUがYOLOv8 Nanoモデルを実行して、デバイス上で直接飲料を検出、カウントします。推論は、50ms未満で完了し、画像を一切アップロードすることなく在庫をリアルタイムで認識できます。
3.判断と報告
JSONフォーマットの認識結果だけがMQTT経由でバックエンド・システム(例:ホーム・アシスタントやカスタム・サーバ)に送信されます。これによって帯域幅の使用量は最低限に抑えられ、補充や在庫への配慮など、行動につながる情報が瞬時に得られます。
技術情報
CamThinkのソリューションは、STM32N6の異種混合アーキテクチャを余すところなく活用しています。
- Neural-ART NPU ― YOLOモデルの推論を50ms未満にまで加速し、どのような種類のサーバにも画像をアップロードせずに、リアルタイムで在庫を検出できます。
- CamThinkのAIツールスタック ― データの収集、ラベリングから学習、量子化されたデプロイ(.bin)まで、エンド・ツー・エンドの総合的なツールチェーンを提供します。開発者は、AIに関する深い専門知識がなくとも、数時間もあればカスタマイズされた製品認識モデルを作成できます。
- 超低消費電力のアーキテクチャ ― STM32N6の組み込みAI機能と、STM32U0コプロセッサのパワー・マネージメントおよびスリープ制御の機能を組み合わせて使用します。デバイスは必要なときだけウェイクアップするため、消費電力とデプロイのコストが大幅に削減されます。
センサ
CMOSイメージ・センサ:OS04C10、HFOV 137°
NE301は、内蔵ISP(ノイズ・リダクションおよび自動露光機能搭載)を使用して画像を前処理します。これによってAIモデルは、反射や低照明など冷蔵庫内の複雑な照明条件下でも鮮明かつ信頼性の高い入力を確実に受け取ることができます。
データセットとモデル
モデル:
- YOLOv8 Nano(物体検出)
- 入力サイズ:320 x 320
- 飲料製品の認識に対して最適化
- CamThinkのAIツールスタックによりオンデバイス・デプロイ用に量子化
結果
- 推論時間:~50ms
- モデルの正確性:飲料製品に対して>90%(さらなる最適化も可能)
- メモリ使用量:すべての処理をオンチップSRAM上で実行でき、外付けのRAMは不要
- 通信トラフィック:画像をアップロードするソリューションに比べて>99%の削減
リソース
STM32Cube AI Studioで最適化
STM32Cube AI Studioは、STM32マイクロコントローラ上で動作させるニューラル・ネットワーク・モデルを評価、最適化、コンパイルするために設計されたデスクトップ・ツールです。ニューラル・ネットワーク処理ユニット(NPU)Neural-ARTアクセラレータ用のコンパイルにも完全対応しています。STのAIソリューションとして提供していたX-CUBE-AIに代わるツールであり、新しいSTM32デバイスにも対応しています。
STM32N6シリーズに最適
Arm® Cortex®‑Mプロセッサをベースとする32bit汎用マイクロコントローラのSTM32ファミリは、より柔軟かつ自由なアプリケーション開発を実現します。高性能、リアルタイムの処理能力、デジタル信号処理(DSP)、低消費電力 / 低電圧動作、コネクティビティなどのさまざまな機能を集積した製品により、開発をサポートします。