プライバシー優先カメラの需要
都市や家庭のインテリジェント化やネットワーク化が進む中、画像ベースのデータ収集の需要が急速に高まると同時に、プライバシーに関する懸念も高まっています。Calumino社は、マス・マーケット向けのカメラ・モジュール専用に設計された世界初の手頃な価格の温度センサを開発することで、プライバシー保護を可能にしています。同社のセンサは、個人のプライバシーを保護しながら、強力なリアルタイムの分析を実現します。このオーストラリアの企業は、性能を損なうことなくデータ駆動型イノベーションに対するユーザの信頼を守るために、STと提携して最先端の組み込みAI技術を活用しました。
課題
- 個人を特定できる画像の撮影や、クラウドへのデータ送信を行わずに、混雑状況や活動検出といった有効なデータを提供するセンサの開発
- バッテリ寿命を維持するために低消費電力を維持すると同時に、カメラ自体によるリアルタイムのデータ分析
ソリューション
- STが開発したニューラル・プロセッシング・ユニットを搭載したSTM32N6を活用したプライバシー優先の温度センサ
- STの無料ソフトウェア・ツールを利用して、Calumino社独自のAIモデルを変換して実装
効果
- データの監視や悪用に関するユーザ懸念の緩和
- スマート機器の支持と普及の拡大
オンデバイス AI がデータ プライバシーを実現する仕組み
従来のカメラは、個人の身元を簡単に特定することができる詳細な画像を撮影します。加えて、クラウドベースの処理では、多くの場合、このセンシティブなデータを第三者が運営する遠隔地のデータ・センターに送信する必要があります。プライバシーに関する国民の関心の高まりを受けて、Calumino社は温度センシングに関する自社の専門性を応用しました。それは、温度特徴のみを検出し、個人を特定できる顔ではなく色分けされた形状として表現するというものでした。しかし、これらの匿名化された熱画像をクラウド処理する場合も、プライバシーのリスクが生じる可能性があります。解決策は明らかで、すべてのデータ処理をデバイス上で直接行う必要がありました。この要件こそが、組み込みAIのイノベーションをリードするSTを不可欠なパートナーとした理由です。
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STM32N6は、
低消費電力とプライバシーを両立しながら、
高性能な組み込みAIを実現する上で不可欠です。”
Marek Yalcin Bulut氏, Calumino社 CEO
Calumino社がSTM32N6を選んだ理由
STM32N6マイコンは、効率的でセキュアなオンデバイスAI処理を実現します。Calumino社が必要とするリアルタイム組み込みAI向けの性能とともに、常時オンのデバイスを支える低消費電力性能を提供します。 STM32N6の低消費電力機能は、Calumino社の(受動的なセンシング原理に基づく)超低消費電力技術と相性が良く、システム全体の消費電力を低く抑えます。
さらに、STが開発したニューラル・プロセッシング・ユニットを搭載したこの高度なマイコンは、手頃な価格に加えて拡張性にも優れており、大規模な展開に対応することができます。
開発面では、Calumino社は独自のアルゴリズムをセンサ上で直接実行でき、エンド・ユーザのプライバシーの完全な保護を実現しました。SSTのEdge AI Suiteにより、プロセスはさらに合理化され、Calumino社はSTM32Cube.AI、ベンチマーク・ツール、コード生成ツールを通じて、モデルの変換、最適化、デプロイを行うことができました。これにより、エンジニアリングに付随する業務を大幅に削減しながら、予測可能かつ高品質なモデル性能をマイコン上で確保しました。
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STM32N6により、試作から数百万ユニットに拡張する際に、安定性と信頼性の高い基盤
が得られます。”
Dawid Oosthuizen氏, Calumino社 ソフトウェア部門責任者
拡大する温度センサの用途
Calumino社のプライバシーを優先する温度センサは、さまざまな業界で注目されています。スマート・ビルディングでは、混雑状況をモニタすることでエネルギー使用の最適化に役立ちます。また、高齢者介護施設では、カメラを使用せずに転倒や日々の活動パターンを追跡することで、入居者の尊厳を守ります。さらに、製造設備などを注意深くモニタし、稼働時の異常を検出します。Calumino社は、堅牢なプライバシーと強力な洞察を組み合わせることで、スマートな技術領域における個人のプライバシーの尊重と維持のあり方を再定義しています。