車載アプリケーションの短絡状態では特に、パワー半導体デバイスの信頼性と安全性を確保する上で、効果的な熱管理が不可欠です。これらの先進的なデバイスは動的な条件下で動作し、障害イベントが発生すると電流と温度が急激に変動します。そのため、発熱、ホット・スポットの発生、保護の有効化に関するリアルタイムの洞察を得る上で、正確な熱マッピングが必須です。
異なるチャネルにわたる潜在的なホット・スポットや不平衡電流経路に関する信頼できる情報を提供できるシミュレータは存在しないため、これは非常に役立ちます。
これらは熱の局所的な集中点を生み出し、温度の変動(熱ドリフト)を引き起こしてデバイスのシャットダウン保護を作動させ、誤動作や故障を招く可能性があります。
したがって、単純な接合部温度測定を超えた、詳細な空間的および時間的温度解析による温度検証が必要です。車載用インテリジェント・マルチチャネル・ドライバやスマート・ヒューズの場合、堅牢な熱管理は以下の確保につながります。
- 長期耐久性
- 安全規格への準拠
- システム全体の信頼性
正確な熱分布の把握が重要である理由
エンジニアにとって、熱特性の正確な把握は以下のようなさまざまな理由から不可欠です。
- 設計の最適化
部品が安全な温度限界の範囲内で動作するように、重大な熱ストレス点を特定してシステム設計を最適化することができます。 - 信頼性の保証
動的熱特性の把握は、過熱によって発生する潜在的な故障モードの予測に役立ち、デバイスの信頼性と寿命の向上につながります。 - 保護戦略の策定
温度ピークが発生するタイミングと場所を把握することで、保護メカニズムを微調整し、不要なシャットダウンや重大な障害を防止することができます。 - システム統合
複数のチャネルや部品が熱的に相互作用する複雑な車載システムにおける正確な熱モデリングと検証を支援します。 - コンプライアンスと安全性
現実の故障状態で熱性能を検証することで、製品が厳しい車載安全規格を満たしていることを確認できます。
温度検証に関する一般的な認識
温度に関することですが、もっと深い話です。
温度検証と言えば、多くの人は接合部温度限界に注目しますが、それだけにとどまらず、ホット・スポットの正確な特定、ダイ全体への熱の広がり方、サーマル・シャットダウン(TSD)などのデバイス保護メカニズムの動的応答など、さらに多くのことに関係します。
STi²Fuseシリーズの一部であるVNF9Q20Fは、堅牢な熱管理が不可欠である要求の厳しい車載アプリケーション向けに設計された高性能4チャネル・スマート・スイッチです。その熱特性を完全に明らかにし、過酷な車載アプリケーションにおけるインテリジェント保護の有効性を評価するために、このデバイスを厳しい負荷短絡(LSC)状態で解析しました。このような状態は、負荷と電源の間に誘導経路が存在し、電流の急激なサージにつながる場合に発生します。
検討したテスト条件:
検討したテスト条件:
- 周囲温度:Tamb = 25℃
- DCバッテリ電圧:Vbat = 13V
- 短絡イベントの継続時間:
- ton = 4ms(熱マッピング用)
- ton = 150ms(低温 / 高温温度センサおよびホット・スポットの温度取得用)
- 負荷短絡(LSC)状態:
- バッテリ・インダクタンス:LSUPPLY = 5µH
- バッテリ抵抗:RSUPPLY = 10mΩ
- 短絡インダクタンス:LSHORT = 5µH
- 短絡抵抗:RSHORT = 100mΩ
高分解能赤外線センサを使用し、各位置での赤外線放射の詳細な50 x 50マトリックスをキャプチャし、約30μmの空間分解能で温度値に変換します。
このアプローチにより、短絡パルス中のデバイスの温度プロファイルに対するこれまでにないほど詳細な視点が得られ、極めて高い精度で温度分布と温度変化を解析できます。
温度検証を開始する前に見落とされがちな3つの洞察
重大なホット・スポットを検出するには高い空間分解能が重要です。VNF9Q20Fの熱マッピングにより約2,500点をスキャンし、見逃すと故障につながる可能性のある局所的な発熱を正確に特定することができました。
熱特性は動的です。VNF9Q20Fの研究では、短い(5ms)パルスと長い(150ms)パルスの両方を適用して、ホット・スポットおよび温度センサ位置における経時的な温度変化を追跡しました。この解析により、デバイスの急速加熱特性とそれに対応する保護メカニズムの有効化が明らかになりました。
短絡パルス中の温度変化を理解することは、お客様のエンジニアにとって、設計の最適化、信頼性の確保、車載用パワー・デバイスの保護戦略の正確な実装に不可欠です。
放射率の変動、ワイヤ・ボンディング、表面状態(成形残渣など)は、赤外線温度測定を歪める可能性があります。これらの影響を認識することは、熱マップの正確な解釈に不可欠です。
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