相変化メモリ

組込み型メモリ技術は岐路に差し掛かっています。CMOSによる先進技術であるFD-SOIとFinFETのいずれにおいても、従来のフローティング・ゲート構造の組込み型不揮発性メモリ(eNVM)を28nmまたはそれ以降のプロセスへ組み込むには大きな技術的挑戦が伴います。新材料の機能物性に基づく新しいNVM技術は、Flashメモリ技術とは根本的に異なる物理的メカニズムを採用し、28nm CMOSへの移行という大きな変化によって明らかとなったプロセス集積化の課題を効果的に解決します。「次世代メモリ」と呼ばれることも多いこれらの新しいNVM技術の中で、開発が最も進んでいるのが相変化メモリ(PCM)です。

PCMの基本的な仕組みは、1960年代にStanford Robert Ovshinsky氏によって発明されました。STはこの最初の開発によって得られた特許のライセンスを取得しており、その後15年以上にわたる草分け的な活動を通じて組込み型PCM(ePCM)を開発し、STの28nm FD-SOIプロセスに統合するに至りました。

PCMは、ゲルマニウム・アンチモン・テルル(GST)合金で構成され、急速な加熱・冷却制御によりGSTがアモルファス(単結晶)相と多結晶相にそれぞれ変化する材料特性を利用しています。電気抵抗の異なるこの2つの相が論理値0と1に対応しており、高抵抗状態のアモルファス相が論理値0、低抵抗状態の多結晶相が論理値1となります。低電圧での読出しおよび書込みが可能なPCMには、Flashメモリやその他の組込み型メモリ技術と比較して非常に優れたメリットがいくつかあります。

phase change memory pcm storage mechanism

相変化メモリ技術のアーキテクチャ

相変化メモリ(PCM)アレイ


phase change memory pcm array

28nm FD-SOI技術に集積された組込み型PCMビットセルの断面図。図中のヒータにより、メモリ・セルが多結晶相またはアモルファス相に急速に変化する。

相変化メモリのメリット

書込み性能 / データ保持

PCMは、1bit単位で書き変えが可能なため、書込み前にバイト単位またはセクタ単位で一括消去する必要があるFlashメモリと比較して、書込み性能が大幅に優れているだけでなく、Flashメモリと同等の読出し性能も確保できます。この1bit単位の書き変えにより、データ記録におけるソフトウェア処理を簡略化できます。メモリ・セルとGST合金に関するSTの特許取得済み技術により、リフローはんだなどの高温環境下でのデータ保持力が確保され、はんだ付けや実装の前にePCMにファームウェアを書き込んでおくことが可能です。

高密度 / 低消費電力のロードマップ

ePCMマクロ・セルの速度 / 消費電力特性および微細化へのロードマップが、大容量の組込み型メモリに向けた拡張性の高いソリューションを提供します。

堅牢性

STのPCM技術は、高温動作、放射線耐性、データ保持の堅牢性について車載技術向けの最も厳しい条件下でも動作するように開発・評価されてきました。ePCMの動作温度範囲は最高+165°Cで、車載用規格であるAEC-Q100 Grade 0の要件を満足しています。

柔軟な後工程

ePCMでは、不揮発性メモリ・セルのプロセス・モジュールが、下地層に作りこまれた複雑なロジック・トランジスタ・モジュールから分離されています。従ってePCMは、メタル配線層内のプロセスとして技術的に独立しており、ほぼすべての技術ノードと組み合わせることができます。

FD-SOIとPCMの組み合わせ

STがリードするもう1つの技術が、完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ(FD-SOI)です。FD-SOIはプレーナ型プロセス技術で、シリコン構造の微細化によるメリットを実現する一方で製造工程も簡略化します。28nm FD-SOIとPCMを組み合わせることで、40nmバルクCMOS上に形成されるFlashメモリの容量と比較して、4~5倍のメモリ・アレイ容量を実現できます。

PCMの活用

処理能力の向上、消費電力削減、メモリの大容量化といったアプリケーション側のニーズが、マイクロコントローラ・アーキテクチャの性能を高めています。特に重要な課題の1つが、ファームウェアの複雑化とサイズ増加に対応する内蔵メモリの大容量化です。

AEC-Q100 Grade 0に準拠し、動作温度範囲が最高+165°CのePCMは、この課題をチップ・レベルおよびシステム・レベルで解決します。また、STの技術により、リフローはんだ付けを想定した高温環境下や放射線下におけるファームウェア / データ保持力が確保されているため、データの安全性がさらに向上します。

STは、サンフランシスコで開催された2018 IEDM(2018年12月4日)において、28nm FD-SOI技術を採用した車載用マイコン向けePCMアレイ(16MB)の最新アーキテクチャならびに性能について発表しました。


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